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【宮守篇 プロローグにて】 「ふふ、眠いでしょ? 一杯頑張ったからね。少し眠る?」 「いえ、そんな……」 「大丈夫、ちゃんと起こして上げるから」 「……」 「無理しないで休みなって、ホラ」 「……あれ?」 「ん?」 「……なんだか、むしろ! 元気がモリモリ湧いて来ました!」 「ええ!?」 「こーんな風に! 塞さんをお姫様だっことかしちゃいますよ!!」ガッ 「はぁ!? ちょっと、ここ電車なんだけど!!」 「次の駅で降りましょう! エネルギーがスッゲー勢いで燃えてくる!!」 「ち、ちょっと待って!?」 「命ばくはーつ!!」ダダダダダダダダダダダダダッ 「こ、こんな筈じゃなかったのにぃいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ…………」ダダダダダダダダダダダダダタッ…… 【色々間違えた塞さん】 「ふふふ……これで、ずっと一緒だね。京ちゃん」 「よっこらせ」ガラッ 「あ! そんな!?」 「詰めが甘いっつーか、ほんと麻雀以外は駄目駄目だよな。お前」 「うぅ……」 「ま、だから俺が見てやらないと駄目なんだけどさ」なでなで 「えへへ……」 【ポンコツといえばやっぱり】 「うふふ……今日も、こっそり京太郎くんと一緒に寝ちゃいます! 既成事実ってこういうことですよね!」 「こんな真夜中に出歩いて。何してるんすか」 「あ、京太郎くん!? どうして!?」 「まぁ、ちょっと雉打ちに……で、早く戻らないと霞さんに怒られますよ」 「うぅ……」 「……ふぅ。あ、そうだ。ちょっと最近寝不足なんですけど」 「……え?」 「良かったら、抱き枕が欲しいなー。なんて」 「……!」パアァッ 【きっと霞さんもポンコツ】 「異類婚姻譚って知ってる?」 「あ、鎖取れた」 「うそっ!?」 「あーもう、痣になってるじゃないですか。カメラに映らないからいいけど」 「そんな……」 「さて、咏さん」 「……」 「お友達から、始めませんか?」 「……それは、どういうことだい?」 「正直、まだ咏さんがどうしてこんな事したのかは分かりません」 「……」 「……けど、咏さんが俺のことを好きだってのは、わかりました」 「……」 「いきなり、結婚とか言われても困っちゃうけど……でも、俺がここまで来れたのも咏さんのお陰ってのは、わかります」 「……京ちゃん」 「だから、その……話が上手く纏まらないけど……咏さん」 「――お友達から、始めませんか?」 【きよくただしいおつきあいを】 【ポンコツ白糸台 プロローグより】 菫「こんな風にメディアを使って、外堀を埋めるやり方をするなんて」 照「……それは、私の京ちゃんに勘違いして近付く奴が多いから」 菫「私の、か。彼の好みとは随分と遠い位置にいる、お前が?」 照「っ!!」 照「……だって」 菫「?」 照「だって、全然気付いてくれないんだもん!! ずっと前からアプローチしてるのに!! 」 菫「!?」 照「ぎょうぢゃ゛ん゛のバカ゛あ゛あ゛あ゛あ゛゛っ!!」 菫「ちょ、照!?」 誠子「あーあー、泣かしちゃった」 尭深「あ、茶柱」 菫「ほら、ホットチョコレートだ」 照「……」ズズッ 菫「落ち着いたか?」 照「……」こくっ 菫「……ま、まぁ、こうなったら直球でいくしか無いだろう。お前の身体つきは彼の的からは外れてるわけだし」 照「……寄せて上げてるくせに」 菫「……」 照「着痩せの逆のくせに」 菫「……照」 照「……菫」 誠子「なぁ、私にも一口くれよ」 尭深「ごめん、今ので品切れ」 誠子「……自分で淹れるか」 淡「バッカみたい」 京太郎「ん? 何か言ったか?」 淡「んーん? それより早くカラオケいこーよ」 京太郎「……お前なぁ」 【チーム虎姫は今日も平和です】 【先生編、姫松パートより】 「寒いねん、京ちゃ――くしゅっ!!」 大きなくしゃみ。 続けてズビズビと鼻を啜る音。 ハァ、と京太郎は大きな溜息を吐いた。 「ほら、ティッシュを」 「ん、おおきに~……」 昼間にスーパーで買った箱のティッシュを開封し、郁乃に手渡す。 ついでにデコに手を当てて熱を計ると、確かに熱を感じた。 「そりゃ、傘も差さずにこの雨の中歩いてたらなぁ……」 「うぅ、だって~」 この人は、昔からそうだった。 出会った時から色々と気にかけてくれたが、何処か抜けたところがあるのだ。 付き合っていた時も、色んな意味で目が離せない彼女だった。 「とりあえず、風呂で温まってください。その間に着替えになりそうなもん探しとくんで」 「え~? 人肌がええのに~」 寝ぼけたことを言うのでデコピンを一つ。 あた、と涙目で額を押さえる郁乃に、京太郎は再び大きな溜息を吐く。 「あんまり寝ぼけたこと言ってると傘持たせて追い出しますよ」 「あ~ん、京ちゃんのいけず~♪」 昼間に出会った洋榎のテンションといい、この人といい。 少なくとも大阪にいる間は多忙な毎日になることを、京太郎は確信した。 「満更でもないクセに~」ヌギヌギ 「ここで着替えない!」 京太郎の気苦労は、尽きない。 【ポンコツいくのん】 彼は、余計なものに纏わり付かれて疲れているだろうから。 少しだけ眠ってもらって、そのうちに、私が彼を誰の手も届かないところで守ってあげよう。 そう計画して、途中までは上手くいったのだけれど―― 「おかーさん! 監禁場所ってどこがいいのかなー!?」 ◆ 「はい、あーん♪」 「あーん」 京太郎は、健夜と同棲している。 いや、同棲と呼ぶには余りに一方的な関係なのかもしれない。 「他の女のせいで変な物が入っているかもしれない」という理由で、食事は常に口移しで行われ。 「目を離したら危ない」という理由で、風呂も睡眠も、片時も健夜が側にいる。 自由はあるが、健夜が必ず側にいる。 ある意味で、監禁のようなことをされているわけだが―― 「京太郎くん、お歳暮のメロン食べる?」 「あーっ! 入って来ないでよおかーさん!!」 ――わりと、どうにでもなりそうな気がした。 【実家って時点でポンコツすこやんしか浮かばない】
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宮守編 清澄 宮守編 久 宮守編 永水 宮守編 すこやん 宮守編 宥 宮守編 竜華、怜
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「わ! 近くに有名なお弁当屋さんがあるんだってー!」 各高の対策を練るためのミーティングを終えて。 話も纏まり、時計の針も12時を差した頃。 備え付けのテレビを点けた豊音が、目を輝かせた。 「へえ。今日のお昼はそれにする?」 「あ、じゃあ俺が買って来ますよ。みなさんお疲れでしょうし」 「そうかい? 悪いねぇ」 「手伝おうか?」 「いえ、大丈夫ですよ。すぐ近くですから」 ◆ こういう時こそ男子の力の見せ所、だと思ったけれど。 「コラ! 一人で頑張らないの!」 「そうだよー。それに、私もここ行ってみたいし」 「テツダイマス!」 「ダル……」 「じゃ、残ってれば?」 「いや……行くよ」 何だかんだで、全員で行くことになってしまった。 ゾロゾロと大所帯で話題の弁当屋に入店する。 ええっと、確かさっきテレビで見たやつは―― 「あっ」 「あ、すいませ……え!?」 弁当を取ろうとした手が、誰かの手と重なって。 顔を上げると、少し前に知り合った清澄の部長と目が合った。 クスリ。 清澄の部長――竹井久が、小さく微笑む。 「奇遇ね、京太郎くん」 「そうですね。竹井さんもテレビを見て来たんですか?」 「久でいいよ。そう、私もテレビを点けたら美味しそうなのが映ってたから」 縁があるのかもね、私たち。 なんて微笑む久さんに、ちょっとだけ見惚れた。 「京太郎? その人は?」 「あ」 胡桃先輩に声を掛けられる。 この瞬間だけ、先輩たちのことを忘れていた。 「この人は、ちょっと前に知り合った――」 「竹井久」 俺の声を遮るように、塞さんが一歩前に出た。 「清澄の部長、だったよね? どうも、宮守の部長の臼沢です。先日は『ウチの』京太郎がお世話になったみたいで」 「いいのよ、気にしなくて。『私たちも』楽しかったし」 ニッコリ微笑みながら。 二校の部長が、握手を交わした。 「とりあえず今は早く行かない? 迷惑になっちゃうし」 そんな二人の様子を見て急かす胡桃先輩。 確かにこんな大所帯で人気商品の前を陣取っているのはよくない。 「向こうに食事スペースあるみたいだよー」 「おわっ」 京太郎の手を取って歩き出す豊音。 「ダル……」 続けて京太郎の右隣を寄り添うように歩き出すシロ先輩。 「イキマスカ!」 その反対側を埋めるように寄り添うエイスリン。 まるで、久に見せ付けているようだと、京太郎は思った。 「良かったら、ご一緒します?」 手を解いて久を誘う塞。 久も、笑顔のまま頷いて。 「ええ、それじゃ――『お邪魔』しようかしら」 円形のテーブルに座る一同。 京太郎の両隣はシロとエイスリンが埋めている。 続くように、豊音、胡桃、塞が席に着く。 久の入る隙間など無いと言わんばかりだが、 「あの、何か?」 「いや、意外と可愛い食べ方するなぁって。京太郎くん」 「は、はぁ……」 そんなことを気にするような久では、なかった。 京太郎は何だか照れ臭くて、久から目を逸らす。 恥ずかしさを誤魔化すように、箸の進むを速める。 「アッ」 カチャ、と食器が跳ねる音。 隣を見れば、エイスリンの制服の袖に、赤いソースが跳ねていた。 「ああ、コレ染みになっちゃうかも……すいません、じっとしていて下さいね」 「ハイ……」 未開封だったおしぼりを使い、染みを叩き出すように拭う。 応急措置だが、やらないよりはマシだろう。 「これで良し……っと。気を付けて下さいね」 「ウン! アリガト!」 京太郎の向かいからその様子を見ていた久が、感心したように口を開く。 「へぇ、京太郎くんって女子力も高いんだね」 「女子力って……」 「あら、褒めてるのよ? お姉さん的にポイント高いかも」 「からかわないで下さいよ」 「だって京太郎くん、可愛いんだもん♪」 「かわ……ああ、もう」 きっとこの先輩にはどうやっても勝てない。 そんな気持ちを含みながら、京太郎は麦茶を口にした。 「へぇ……」 「ふーん……」 「……お弁当、美味しいね」 「そうだね。東京は違うなぁ、色々と」 特に、それ以上は空気が荒れるようなことも無く。 平和な食事風景が続けられた。 「それじゃあ、また」 「ええ、楽しかったわ……とても、ね」 「次は試合で、ですかね?」 「どうかな? もしかしたらまたヒョッコリ、会うことになるかもね」 ――それじゃ、連絡ちょうだいね。京太郎くん。 そんな台詞を残して、久は清澄の泊まっている宿に帰って行った。 「清澄かあ……」 「あの人も、倒さないといけないんだよね」 「中堅だから、私の相手か」 「私も大将戦頑張るよ!」 「帰ったらまた」 「ミーティング!」 和気藹々と話しながら、自分たちの部屋へと戻る宮守のメンバーたち。 その様子に、自分が入部したばかりの頃の空気を感じて。 「……よし、俺も頑張ろう!」 全国大会に来て良かったと。 京太郎は改めて、そう思った。 【お弁当を食べに行こう! 了】
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